タイに通い始めた頃は、食べ物の選択肢はとても限られていた。
1980年頃といえば、気の利いたタイ語辞書もあまりなく、ガイドブックといっても団体ツアー客向けのものが多く、独り歩き用のものなど全くと言って良いほどなかったからだ。
当時、先ず覚えたのが焼き飯(カオパット)だ。フォークとスプーンの使い方に悩んだが、タイ人の真似をしているうちに、それもすっかり習得できた。
そして、次に知ったのがラーメン(バミーナム)だ。
焼き飯もラーメンも、日本人にとっては全く抵抗なく食べることができて、この2つのメニューを交互に注文する時期がしばらく続いた。朝にラーメンを食べたら、昼は焼き飯を注文し、夜はまたラーメンにするといった具合に。何とも情けない話だ。
そして第3の選択肢、新メニューに加わったのが、この鶏飯(カオマンガイ)だ。確か北タイの街角で、屋台で食べたのが初めてだったと記憶する。タイ文字も読めなかった頃のことで、何という料理かも分からず、「カオガイ」などと言って注文していたものだ。
未だにカオマンガイを食べる度、食の守備範囲が広がったことがとても嬉しかった当時のことを思い出す。