2014年11月9日日曜日
Big-Cエスカレーターの前で
チェンラーイのBig-Cといえば、忘れられない思い出がある。開店直後、エスカレータの前での、ちょっとした出来事だ。
チェンラーイの郊外に、このBig-Cが大々的にオープンすることになったのは、1990年代も後半のことだった。Big-C開店は、地元では大ニュースになった。何しろ当時のチェンラーイでは、買い物といえば市場ですませるのが常識。それまでも、デパートらしきものが無かったわけではない。しかし街の中心にある2軒ほどのそれはとても小さく、Big-Cなどという大規模店は市民にとっては別世界の存在だったからだ。
開店の日、早速出かけてみると、さすが地方都市。バンコクなどの都会のBigCと比べると、明らかに客層が垢抜けていない。市場に野菜を買いに行くような気分で来ている人ばかり。しかも広い店内はまだガラーンとしている。
二階に上がるために、エスカレーターの方へ行くと人だかりができている。エスカレーターは動いているのに、誰も乗っていない。いったいどうしたのかと思いながら最前列へ。
エスカレーターのステップの前には、いかにもさっきまで農作業をしていましたという風情の、中・熟年女性が数人、照れ笑いを浮かべながら佇んでいる。お互いに顔を見合せながら先を譲り合っている様子。納得した。エスカレーターを前にして、第一歩を踏み出す勇気がないのだ。後続の人達も、どうやら腰が引けているようで、誰も前にしゃしゃり出ようとはしない。
「足を乗せれば良さそうだけど、動いているし怖いな。失敗して転んだらみっともないし・・・」
この街で初めて見るエスカレーターを前にして、内心こんな風に考えていたのだろう。
結局エスカレーターベテランの日本人が先頭に出て、見本を示す羽目になってしまった。すると、その後に続いて、皆さんそれに倣い、まるで小さい子供がするように、ぴょんと跳び乗っていた。
上手く乗ることができて、ちょっと誇らしげな表情を見ていると、こちらまで嬉しい気分になってしまったものだ。